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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Space and planetary sciences

201706201706

火星着陸機搭載カメラを利用した太陽光スペクトル測定による火星ダスト特性・水蒸気カラム量の導出

眞子 直弘,野口 克行,はしもと じょーじ,千秋 博紀,乙部 直人,鈴木 睦,久世 宏明

Feasibility of retrieving dust properties and total column water vapor from solar spectra measured using a lander camera on Mars

Manago N, Noguchi K, Hashimoto G L, Senshu H, Otobe N, Suzuki M, Kuze H

Mars atmosphere, Dust particles, Total column water vapor, Direct solar radiation, Scattered solar radiation, Radiative transfer simulation, Inverse analysis

ダストモデルパラメータの導出誤差。各パネルは、光学的厚さ(a)、粒径分布の実効半径(b)と実効分散(c)、ヘマタイト体積混合比(d)、ケイ酸塩複素屈折率の実部(e)と虚部(f)、鉛直分布のスケール高度(g)、の各ダストモデルパラメータの導出誤差を太陽天頂角(SZA)の関数として示す。線の違いは、Case1. 全部の観測量、Case2. 直達光以外、Case3. オリオール以外、Case4. 前方散乱以外、Case5. 後方散乱以外、Case6. カラー比以外、の各観測量を使った場合を示す。左右のスケールはそれぞれダストモデルパラメータ変化幅およびアプリオリ値が1になるように規格化した値。

火星大気中のダストや水蒸気は、大気や地表面の熱収支に大きな影響を及ぼすと考えられる。この論文では、将来の火星探査ミッションにおいて火星着陸機に環境監視カメラを搭載して直達・散乱太陽光スペクトルを測定することを想定し、ダストの物理的・光学的特性を導出するために必要となる条件を詳しく調べた。火星エアロゾルをモデル化するため、波長 550 nm における光学的厚さ(τ)、粒径分布の実効半径(reff)と実効分散(veff)、ヘマタイトの体積混合比(ρA)、ケイ酸塩複素屈折率の実部(m0)と虚部(k0)、鉛直分布のスケール高度(zs)の7つのパラメータを用いることにした。その際、以下のような仮定を行った。(1) 火星ダストにはケイ酸塩のような可視光の吸収性が小さい基質にヘマタイトのような青色光の吸収性が大きい含有物が少量含まれている、(2) ダストの形状は回転楕円体であり、サイズ分布は単峰性ガンマ分布に従う、(3) ダストの分布は水平方向に一様であり、鉛直方向には指数関数的に減少する。観測量は、青色、緑色、赤色(それぞれ波長 450、550、675 nm)の直達太陽光および青色、赤色の散乱太陽光(オリオール、基準散乱、前方散乱、後方散乱、それぞれ散乱角3、10、50、120°)の測定から得られる緑色直達光強度、直達・散乱光のカラー比、青色・赤色の散乱比である(カラー比は赤色に対する青色の強度比、散乱比は基準散乱に対する各散乱の強度比)。シミュレーションの結果、特に4つのパラメータ(τreffveffρA が精度良く導出できることが分かった。各観測量の影響を調べるため、(1) 全部の観測量、(2) 直達光以外、(3) オリオール以外、(4) 前方散乱以外、(5) 後方散乱以外、(6) カラー比以外、の各観測量を使って導出を試みたところ、特にオリオールやカラー比を使わなかった場合に導出精度の低下が見られた。また、本研究ではダスト形状(球形・非球形)や粒径分布(1峰性・2峰性)の影響、波長 925、935、972 nm の直達・散乱太陽光スペクトルを使った水蒸気カラム量の導出についても検討を行った。本論文で得られた結果は、ダスト特性や水蒸気カラム量を測定するための装置設計に有効な指針となるものと考えられる。

日本語原稿執筆者:眞子 直弘(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)
(敬称略)