※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する51学協会と協力して出版しています.

※Progress in Earth and Planetary Science は,独立行政法人日本学術振興会JSPSより科学研究費助成事業(科学研究費補助金)のサポートを受けています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加51学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Solid earth sciences

201707201707

カリフォルニアフランシスカンコンプレックスにおける海洋プレート層序の構造的形態と変化:メランジュの起源と沈み込み–付加過程に関する知見

Wakabayashi J

Structural context and variation of ocean plate stratigraphy, Franciscan Complex, California: insight into mélange origins and subduction-accretion processes

Wakabayashi J

Ocean plate stratigraphy, Subduction complex evolution, Subduction megathrust slip accommodation, tectonic and sedimentary mélanges

沈み込み帯周辺で見られる海洋プレート層序の付加作用を示した地殻断面模式図.

沈み込む海洋プレートから沈み込みー付加体への物質の付加は,海洋プレートが誕生されてから海溝に到達するまでの履歴を記録した岩石群を形成する.これらの岩石群は,下位から上位に向かって,海洋底を構成する火成岩,遠洋性堆積物(チャートや石灰岩),海溝充填砕屑性堆積岩(ほとんどが砂岩、泥岩/頁岩)よりなり,海洋プレート層序(Ocean Plate Stratigraphy: OPS)と呼ばれてきた.OPSの付加の過程で,メガスラストの滑りは覆瓦状断層や広範囲に渡る歪でまかなわれ,OPSが圧縮・繰り返す一方,異なる時期に付加したOPSは非付加体メガスラスト層準(non-accretionary megathrust horizons)によって隔てられている.カリフォルニアのフランシスカン沈み込みコンプレックスは,1.5億年以上の期間に渡って間欠的に付加したもので,非付加体メガスラスト層準により隔てられたさまざまな特徴をもつOPSユニットを取り込んでいる.フランシスカンOPSのほとんどは,下位より,中央海嶺玄武岩(MORB),チャート,海溝充填砕屑性堆積岩から構成されている.海溝充填砕屑性堆積岩は様々な割合を持つタービダイトと珪長質砕屑物や蛇紋岩の基質を有するオリストストローム(堆積性メランジュ)で構成されている.量的には,ほとんどのフランシスカンOPSにおいて海溝充填堆積物が卓越するが,火成岩や遠洋性堆積岩が卓越するユニットもある.石灰岩に覆われた海洋島玄武岩や深海性の蛇紋岩化した橄欖岩のスラブは,MORB-チャート集合体よりも少ない.最も初期に付加したOPSは、沈み込み帯域(supra-subduction zone)に類した場で形成されたメタベイサイトよりなり,これは少量の変塩基性岩や変チャートが覆瓦状になっているが、砕屑岩の要素を含まない.[KU1]フランシスカンOPSの変形の大部分は,広範囲に渡る歪の分散というよりむしろ断層沿いに局所化している.この変形により部分的にブロック・イン・マトリックス構造を有する構造性メランジュが生じているが,砕屑性OPSの要素の一部を構成する堆積性メランジュと対照的である.そのような構造性メランジュは、オリストストローム由来のブロックや基質を含んでいる可能性がある.フランシスカンにおける沈み込みとOPSの付加は、約1.65~1.7億年前に島弧地殻において始まり,数千万年間に渡る付加がほとんどもしくは全くない期間を経た後に,中央海嶺玄武岩や海洋性玄武岩が付加した.沈み込み開始に引き続き、海嶺が海溝に近づくが、1.2~1.25億年の沈み込み前に休止し,その後,0.95億年前までに,沈み込んだ海洋地殻の年代が次第に古くなっていった.0.95億年前以降、太平洋–ファラロン拡大軸が到達して沈み込みが停止し、トランスフォーム型プレート境界に変化するまで、海洋地殻の年代は次第に若くなっていった.

日本語原稿執筆者:針金 由美子(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)
(敬称略)