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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201705201705

3万気圧、1050℃におけるカンラン石への水素の4種類の置換メカニズム

Tollan P, Smith R, O'Neill H, Hermann J

The responses of the four main substitution mechanisms of H in olivine to H2O activity at 1050 °C and 3 GPa

Tollan P, Smith R, O'Neill H, Hermann J

Olivine, Nominally Anhydrous Minerals, Substitution mechanism, Point defect, Water in the mantle

塩水中の水に対するカンラン石中の4種の点欠陥に対応した含水量の変化

上部マントルの主要構成鉱物であるカンラン石中の水の溶解度(CH2O)を、ピストンシリンダー型高温高圧発生装置(3万気圧、1050℃)を用いて、急冷回収物の顕微赤外分光分析を組み合わせて調べた。NaCl-H2O系で水の活動度を変化させ、4種類の実験を行なった。本実験は、カンラン石を高温高圧条件のその場で成長させようとした実験で、すでに点欠陥を有するカンラン石を高温高圧条件で水和して行く実験とは異なることを目指した。カンラン石の化学組成をレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)で分析するとともに、偏光装置を有する顕微赤外分光計でカンラン中のH2Oの吸収スペクトルの位置を決定し、どのような置換反応がおこっているか推定した。

カンラン石中の水の量(CH2O)と水の活動度の関係を右図に示す。(Mg,Fe)Oと共存させることでシリカの活動度を下げたカンラン石中の水の量(CH2O)は、H2Oの活動度の2乗に比例し、ケイ素を4つの水素で置換することを示す(図の[Si])。また、直方輝石と共存させたカンラン石では、CH2OはH2Oの活動度に比例し、マグネシウムが2つの水素と置換することを示す(図の[Mg])。4価のチタンを含ませたカンラン石を使用し、直方輝石と共存する場合は、ケイ素の代わりに水素2つ、マグネシウムの代わりにチタンが入ったと推定される。これはチタンを含むクライノヒューマイトのスペクトルと似ていて、さらに、水素とチタンの存在度から確かと考えられる(図の[Ti])。スカンジウムを含むカンラン石を使用し、直方輝石と共存する場合は、CH2Oは水の活動度の1/2乗に比例し、3価のスカンジウムと水素で2つのマグネシウムを置換すると考えられる(図の[triv])。

本実験の結果は、水の活動度を1に保った実験の結果に比べて、CH2Oの中でケイ素と4つの水素の置換によるものが占める割合が減ることを示す。マグネシウムと水素が置換する反応の寄与は以前から示されていたように小さい。また、チタンやスカンジウムを加えた場合は、それぞれ同程度のCH2Oを持つが、ケイ素と4つの水素の置換によって得られる含水量よりも小さい(右図)。天然では、これらの置換のいくつかはカンラン石の水和を考える時には起こりえて、それぞれの置換の総和として平衡なCH2Oを獲得すると考える。

日本語原稿執筆者:川本 竜彦(京都大学 大学院 理学研究科附属地球熱学研究施設)
(敬称略)