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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2015

201703201703

小浜湾における 222Rn の高解像度マッピング及び定点連続観測と海底地下水湧出に関わる生物地球化学的指標の時空間変動

小林 志保,杉本 亮,本田 尚美,田原 大輔,富永 修,小路 淳,山田 誠,中田 聡史,谷口 真人

High-resolution mapping and time-series measurements of 222Rn concentrations and biogeochemical properties related to submarine groundwater discharge along the coast of Obama Bay, a semi-enclosed sea in Japan

Kobayashi S, Sugimoto R, Honda H, Miyata Y, Tahara D, Tominaga O, Shoji J, Yamada M, Nakada S, Taniguchi M

submarine groundwater discharge (SGD), 222Rn monitoring, chlorophyll-a, nutrients, wind-driven advection, coastal seas

ラドン濃度と海底湧水量(上図)およびラドン濃度と北向き風速(下図)

海底からの地下水の湧出が沿岸海域の生態系に影響を及ぼす事例が,世界中で観測されるようになっている.海底地下水湧出を定量化する有力な指標には,海水と地下水の間で濃度に大きな差のあるラドン(222Rn)がある.本研究では,福井県小浜湾において,2013年に計4回の 222Rn 沿岸曳航調査および約1ヶ月にわたる定点連続調査を行なった.得られた 222Rn 濃度の分布および時系列変化を,気象条件,生物地球化学的指標,および海底湧水量測定の結果と合わせて解析した.その結果,地下水は湾内の生物化学的指標の分布に影響を及ぼしていることが明らかになったが,地下水の供給経路は,海底からの湧出のみではないことが示唆された.小浜湾に流入する河川水の 222Rn 濃度は,河床からの地下水湧出と急峻な地形からの河川水の短時間での海への流入のため,日本国内の他の多くの河川と同様に比較的高いことが知られている.小浜湾では河口部に常に 222Rn 濃度の高い水があり,その北側への移流が沿岸の 222Rn 濃度分布に強く影響していることがうかがわれた.河口部よりも北側にある定点における 222Rn 濃度の時間変化は,南向きの風による 222Rn 高濃度水塊の北側への移流の抑制によって強く支配されていた.一方,湧出量測定の結果の結果から,1日以内の短い期間における 222Rn 濃度の時間変化には,その場所での海底地下水湧出も影響を及ぼしていることが示された.また基礎生産の制限要因が栄養塩濃度であった夏季には,地下水湧出の指標である 222Rn と基礎生産の指標であるクロロフィル濃度の間に,有意な相関関係があった.小浜湾においても,地下水湧出という形での陸から海への淡水と栄養塩の供給が,沿岸生態系に影響を及ぼしていると考えられた.

日本語原稿執筆者:小林 志保(京都大学 フィールド科学教育研究センター)
(敬称略)