※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する51学協会と協力して出版しています.
※Progress in Earth and Planetary Science は,独立行政法人日本学術振興会JSPSより科学研究費助成事業(科学研究費補助金)のサポートを受けています.
日本語Abstract
Research
Solid earth sciences
201703201703
マントル遷移層鉱物の水素易動度
Caracas R,Panero W R
Hydrogen mobility in transition zone silicates
Caracas R, Panero W R
Diffusion, transition zone, Wadsleyite, Ringwoodite, Transport, Electrical conductivity, Defects, Hydrogen
リングウッタイトとワズレアイト中の水素原子の易動度を密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学計算によって調べた。これらの鉱物中への水素の置換はMg↔2H、Si↔Mg+2H、Si↔4Hのモデルを採用した。温度圧力条件は、遷移層圧力(23-33 GPa)、1500- 2500 Kである。ある程度の長時間シミュレーション(70-200ピコ秒)を行うことにより拡散係数を詳細に決定した。その結果、温度、含水量、水素の置換形式のすべてが原子の易動度に重要な影響をもたらすことが判明した。最も速い拡散を示すのはMg↔2Hであり、一方でHはSi↔Mg+2H置換のほうがSi↔4Hの置換と比べてより拡散した。2000 Kでのリングウッタイト中の水素の拡散係数は1.13×10-9 m2/sでありワズレアイトのそれ(0.93×10-9m2/s)よりも大きい。一般的に水素原子は数十ピコ秒かそれ以上の間、陽イオン空孔にトラップ、もしくはその周囲を徘徊し実質的なサイト間の移動は数十フェムト秒程度であった。2500 Kではこれらの水素移動のいくつかは数Å以上続き、2000 Kでは必ず拡散するわけではなかった。1500 Kではほとんどの水素は陽イオン空孔から移動し拡散することはなかった。
日本語原稿執筆者:土屋 旬(愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター)
(敬称略)