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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2015

201610201610

地震波勾配法による2次元地震波動場の再構築

前田 拓人,西田 究,高木 涼太,小原 一成

Reconstruction of a 2D seismic wavefield by seismic gradiometry

Maeda T, Nishida K, Takagi R, Obara K

seismic gradiometry, array signal processing, surface waves, scattering, numerical simulation

地震波勾配法によって解析された地震波動場の例.左図に地震発生時からの経過時間130秒における各観測点の周期25-50秒の上下動方向変位を,中央図には地震波勾配法によって再構築された連続波動場を,右図には推定された空間勾配を用いて推定されたスローネスベクトルの空間分布をそれぞれ示す.スローネスベクトルは,矢印の向きが波動伝播方向を,長さがスローネスの大きさをそれぞれ示す.震央位置は右図に星印で示されている.

SpringerOpenの論文掲載サイトでは動画もご覧いただけます.

日本列島には,防災科学技術研究所の高感度地震観測網Hi-netに代表されるほぼ一様かつ稠密な地震観測網が整備されており,地震波形の連続記録が日々蓄積されている.この論文では,稠密な地震波観測記録から地震波の伝播特性をより効果的に抽出するために,地震波勾配法(Seismic Gradiometry)という手法を用いて地震波を空間的に連続な「場」として扱う方法を提案した.さらに,数値計算に基づく地震波動伝播シミュレーション結果とHi-netの記録解析の両面から,その有効性を検証した.

地震波勾配法は,地震波振幅の空間方向へのTaylor展開に基づき,周辺観測点の記録から振幅と地震波の空間微分とを推定する手法である.この方法によって,個々の離散的な観測点における地震波形を,空間的に連続な波動場として取り扱うことができるようになる.さらにその空間微分を用いることで,波の伝播方向やスローネスといった情報も抽出することができる.図に,実記録の解析に基づく観測点の上下動変位とそこから推定されたスローネスベクトルの空間分布を示す.推定された連続波動場からは西南日本の長波長のP波と遅れてくる東北日本の短波長の表面波とがはっきりと分離している様子が確認でき,またそれらはスローネスベクトルの違いにも明瞭に現れている.この方法は波長が平均観測点間隔よりも十分に長い場合にのみ適用可能である.3次元地震波数値シミュレーションによる仮想地震波形記録に基づく検討から,Hi-netの場合には周期約25秒より長い表面波にもっともよく適用できることが確認された.さらに論文中では,地震波勾配法の推定結果をもとに,3成分の地震波動場を発散と回転ベクトル成分に分解することも提案している.この方法によって,複雑な地震波動をP波とS波,あるいはRayleigh波とLove波に分離することができるようになった.

地震波解析を個々の観測点から波動場としての面に拡張することにより,観測記録からより多くの情報を抽出することができるようになった.今後この地震波勾配法を活用することによって,複雑な地震波動場や,ひいてはそれをもたらす日本列島下の不均質構造の理解がさらに深まることが期待される.

日本語原稿執筆者:前田 拓人(東京大学 地震研究所)
(敬称略)