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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201609201609

炭酸塩緑簾石エクロジャイトの融解: 沈み込むスラブからのカーボナタイトマグマの生成

Poli S

Melting carbonated epidote eclogites: carbonatites from subducting slabs.

Poli S

Eclogite, carbonatite, carbon cycle, kyanite, epidote, calcite, subduction

炭酸塩質緑簾石斑れい岩の溶融関係。

a) CaO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O-CO2 (CMASHC) 系のシュライネマーカース解析。

b) 実験によって得られた相平衡図。反応境界は a) の解析に基づいている。また、暖かい沈み込み帯の圧力―温度勾配は、Syracause et al. (2010)に基づいている。

炭酸塩エクロジャイトのソリダス温度に基づくと島弧下部の沈み込み帯の深さにおいては、沈みこんだ海洋リソスフィアからはカーボナタイト(炭酸塩岩)マグマは生じないと思われる。しかしながら、海洋地殻には、リフト帯などで変質し、灰長石成分に富んだ大量の斜長石が変成されて緑簾石を生成する。そのために、海洋地殻には、緑簾石を含むさまざまな斑れい岩質の岩石が含まれている。緑簾石の高圧下での安定領域は、ノルム計算により得られる灰長石成分量によって変化する。したがって、変質した斑れい岩では、緑簾石が広い圧力領域で安定に存在し、緑簾石の安定領域が沈み込む斑れい岩の海洋地殻のソリダスに影響する可能性がある。

ここでは、ノルム計算で灰長石成分(An37およびAn45)に富んだモデルエクロジャイトの安定領域に対する総化学組成および揮発性成分の影響を解明するために、38.6%のノルム灰長石成分を有するエクロジャイトの4.6GPa・1000oCまでの条件における一連の相平衡と融解に関する実験結果を示す。

われわれの実験においては、すべての合成条件で、柘榴石、単斜輝石、コーズ石が見出された。3.7GPa・750oCまでローソン石が存在し、流体に飽和した条件では、3.8GPa・775-800oCにおいて、藍晶石(カヤナイト)、ドロマイト、マグネサイトとともに緑簾石が存在した。4.2GPa・850oCでは、無水鉱物である柘榴石、オンファサイト、アラゴナイト、藍晶石が見出され、900oCではグラニトイド組成のガラス、カーボナタイト(炭酸塩岩)的な析出物、Na-炭酸塩が観察された。本実験で観察されたカーボナタイト的な析出物は、この実験条件では含水のカーボナタイトマグマが存在した証拠と解釈することができる。これらの含水条件で生成したカーボナタイトマグマは無水の実験で得られるカーボナタイトマグマに比べてCaに富んでおり、これは水がCaCO3のソリダスを大きく低下させることと調和的である。このことから、流体が存在しない灰長石に富んだ斑れい岩においても、緑簾石とドロマイト集合体が存在すると、斑れい岩の高圧での安定領域が拡大し、その融解によってカーボナタイト的なマグマが生成することが期待される。

サブソリダスの条件において、深さ120kmを超える条件で炭酸塩の存在下での緑簾石の分解は、島弧の深部でのC-O-H流体の生成の主な原因となり得る。暖かい沈み込み帯におけるさまざまな組成の斑れい岩類や緑簾石岩からのカーボナタイト(炭酸塩岩)質のマグマの生成分離は、沈み込み帯のリソスフェイアウエッジでの変質作用の新しいシナリオであり、炭素循環の新しいメカニズムである。

日本語原稿執筆者:大谷 栄治(東北大学)
(敬称略)