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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201608201608

Early Enriched Reservoirの主成分元素組成: 初期地球における142Nd/144Nd同位体系と未分化カンラン岩の高圧融解実験からの制約

近藤 望,芳野 極,松影 香子,小木曽 哲

Major element composition of an Early Enriched Reservoir: Constraints from 142Nd/144Nd isotope systematics in the early Earth and high pressure melting experiments of a primitive peridotite

Kondo N, Yoshino T, Matsukage K N, Kogiso T

142Nd anomaly, Early Enriched Reservoir, Hadean, Major element composition, Near-solidus melt, High-pressure melting experiment

EER形成の概念図。(上図)本研究で想定される142Nd/144Nd の進化。マントル中のある未分化領域がEERとEDRに分化し、EERが地球内部に隠されるか、地球外部に失われる。EDRと残りの未分化領域は混ざり合い、ASEを形成する。(下図)EER形成のボックスモデル。Xは分化に関わる領域の、全マントルに対する割合を示す。ASE: Accessible Silicate Earth(地球のケイ酸塩部分の中でも、岩石試料が入手できる範囲); EER: Early Enriched Reservoir(ASEとコンドライトの間の142Nd/144Ndの差を説明する低いSm/Ndを持つ、液相濃集元素の貯蔵庫); EDR: Early Depleted Reservoir(EERの形成時に融け残りとして形成される固相); CHUR: Chondritic Uniform Reservoir(あるコンドライト組成を持った仮想的未分化マントル)

地球の珪酸塩部分の中でも、岩石試料が手に入る範囲(Accessible Silicate Earth, ASE)は大半のコンドライトよりも高い142Nd/144Nd 比を持つ。そのため、地球がこれらのコンドライトから形成したと仮定すると、ASEとコンドライトの142Nd/144Ndの違いを説明する142Nd/144Nd比の低い貯蔵庫が必要となる。このような142Nd/144Nd比の低い貯蔵庫は初期地球でメルトとして形成したと考えられており、Early Enriched Reservoir(EER)と呼ばれている。現在の地球の組成を決める大きな要素であるEERの起源と末路を理解する上で、EERの化学的・物理的性質(例えば密度)を推定することは必要不可欠であるが、未だ十分に理解されていない。

本研究では、EERの主成分元素組成を決定するために、まずEERが持つべきNd同位体比からEERの形成年代と形成時の温度—圧力条件を推定した。この推定はSmとNdの分配の温度、圧力、融解相関係への依存性を考慮して行われた。結果として、EERは太陽系形成から3350万年以内に、上部マントル浅部の圧力におけるソリダス付近メルトとして形成されたと推定された。本研究では次に,未分化カンラン岩の高圧融解実験を行い、EERとなるメルトの主成分元素組成を圧力7GPa、ソリダス温度で決定し、その密度を計算した。推定されたメルトの密度は未分化カンラン岩よりも低く、EERとなるメルトはマントル中を上昇し、初期地球における地殻を形成した可能性が示唆された。冥王代にはマントルのポテンシャル温度が高かったと想定すると、EERとなるメルトは高圧で形成され、その組成はピクライトからコマチアイト質であったと考えられる。本研究で推定されたEERの形成年代は月を形成した最後の巨大衝突よりも早いため、EERであるピクライトからコマチアイト質の地殻は最後の巨大衝突か、その前の巨大衝突の際に地球から剥ぎ取られてしまった可能性が高い。かくして、EERは失われ、現在の地球組成は形成時よりも枯渇していると考えられる。

日本語原稿執筆者:近藤 望(京都大学大学院 人間・環境学研究科)
(敬称略)