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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Atmospheric and hydrospheric sciences

201607201607

放射強制力に対する地球平均地上気温の過渡的応答に関する理解の現状

吉森正和,渡部雅浩,塩竈秀夫,岡 顕,阿部彩子,大垣内るみ,釜江陽一

A review of progress towards understanding the transient global mean surface temperature response to radiative perturbation

Yoshimori M, Watanabe M, Shiogama H, Oka A, Abe-Ouchi A, Ohgaito R, Kamae Y

Transient climate response, Equilibrium climate sensitivity, Climate feedback, Ocean heat uptake efficacy, Efficacy of forcing

CO2増加時の地球平均地上気温の変化と地球のエネルギー収支の関係。黒十字:年1%のCO2漸増実験(1~140年間の毎年)、青十字: CO2を突然4倍にした実験(abrupt4xCO2、1~150年間の毎年)、赤十字:CO2を4倍で一定にした実験(141~3680年間の各20年平均)、青線:青十字の回帰直線、青丸:10の異なる初期値から始めたabrupt4xCO2のアンサンブル実験の最初の20年間から外挿された平衡時の気温応答。

観測された気温変動がどのような原因で起きたのか、将来どのくらいのスピードで地球が温暖化するのか、二酸化炭素の排出を削減してその濃度を安定化させた場合、その後まだどのくらい温暖化するのか、などの実用的な疑問に答えるためには、放射強制力に対する長い時間が経過した後の平衡応答を理解するだけでは不十分であり、時間変化する過渡応答を理解する必要がある。これまでの研究では、放射強制力が与えられたときに温暖化の程度を決める気候フィードバックパラメータは気候システムに固有なものであり、一定であると仮定されて議論が進められることが多かった。しかし、最近の研究では、この仮定によって将来の気候予測に影響の無視できない誤差が生じることが明らかになってきた。本総説では、まず気候フィードバックパラメータが一定のときに、気温上昇率を決める要因についてレビューする。次に、気候フィードバックパラメータが変化する要因を説明するために導入された「海洋熱吸収のエフィカシー」と「放射強制因子のエフィカシー」という比較的新しい2つの概念を紹介する。海洋熱吸収のエフィカシーは、海洋熱吸収によってもたらされる過渡的温暖化応答を平衡応答と関連付けるための概念であり、放射強制因子のエフィカシーは、CO2以外の放射強制因子による気温上昇をCO2による気温上昇と関連づけるための概念である。これらの概念は、放射強制力の定義や計算にも深く関係する一方、「海洋熱吸収のエフィシェンシー」など類似の専門用語もあり、必ずしも広く理解されていない。本総説では、日本の数値気候モデルMIROCを用いて数千年積分を行った実験データを例に挙げながら解説を補足する。最後に、最新のIPCCレポートにも関係するCO2倍増時の気温上昇幅を示す平衡気候感度の推定の問題に触れ、今後の課題や推奨される方向性について言及する。

日本語原稿執筆者:吉森正和(北海道大学 大学院地球環境科学研究院・北極域研究センター)
(敬称略)