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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Interdisciplinary research

201605201605

後期鮮新世から前期更新世における地球規模の気候変動および地域的な構造運動に関連した日本海の微化石群集変化

板木 拓也

Transitional changes in microfossil assemblages in the Japan Sea from the Late Pliocene to Early Pleistocene related to global climatic and local tectonic events

Itaki T

Radiolaria, Diatom, Calcareous nannofossil, Foraminifera, Ostracoda, Productivity, Paleoceanography, Northern Hemisphere glaciation, Tectonics, Tsushima Warm Current

3つのステージにおける日本海の古地理変化を示した概略図.実線矢印は外洋水の主要な流入経路,破線矢印は制限された流入経路を示す.

日本海およびその周辺域で行われた陸上での地質調査・掘削や海洋掘削で得られた試料を用いた数多くの微古生物学的研究は,世界規模の気候変動や地域的な構造運動に起因する日本海の環境変化に関する重要な情報を提供している.本論では,同地域における後期鮮新世から前期更新世の微化石群集の主要な変化をレビューした.後期鮮新世(3.5~2.7 Ma)には,表層のプランクトン群集(石灰質ナンノ化石,珪藻,放散虫,浮遊性有孔虫)は,主に冷温から温帯域に適応したタクサによって特徴付けられ,栄養塩に富む北太平洋表層水が北方海峡を介して日本海に流入していたことが伺える.当時,日本海には放散虫の太平洋型深海種が生息していたことから,北方海峡は 500 m 以上の深度を有し,ここより北太平洋の深層水が日本海に流入していたものと考えられる.また,この時期には温暖性種が日本の沿岸域に沿って僅かに認められ,南方海峡から少量の温暖水が流入していた可能性が示唆される.北半球で氷床が発達し始めた 2.75 Maには,寒冷化を示す石灰質ナンノ化石および沿岸性介形虫が急激に増加した.それとほぼ同時に低温の中深層水を特徴付ける介形虫と放散虫の産出量が増加しており,これは冬期モンスーンの発達に伴う活発な深層循環により日本海固有水が形成され始めたことを示唆している.また,2.75 Ma 頃に放散虫の太平洋型深海種が消滅した.これは,氷河性の海水準低下や東北日本の隆起による北方海峡の閉鎖あるいは浅化のために北太平洋から日本海への深海種の移入が阻まれたことに加え,日本海の深海域が断続的に無酸素環境となったためと考えられる.その後の2.3~1.3 Ma における基礎生産の顕著な減少も北方海峡の縮小によって北太平洋からの栄養塩の供給が制限された結果と推定される.1.7 Ma 以降,亜熱帯表層群集が増加し,これは南方海峡を介して日本海に対馬海流が本格的に流入し始めたことを示している.この南方海峡の成立は,沖縄トラフを含む日本の南西地域が沈降するのに引き続いて起こったようである.

日本語原稿執筆者:板木拓也(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 海洋地質研究グループ)
(敬称略)