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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Review

Solid earth sciences

201605201605

伊豆・小笠原・マリアナ弧の沈み込み初期過程に着目したフィリピン海プレートの誕生、進化、消滅

Lallemand S

Philippine Sea Plate inception, evolution and consumption with special emphasis on the early stages of Izu-Bonin-Mariana subduction

Lallemand S

Philippine Sea Plate, Izu-Bonin-Mariana, subduction initiation, boninite, fore-arc basalt, serpentinite mud volcano, back-arc basin, transform fault, arc terrane, plume-ridge interaction

IBM(伊豆小笠原マリアナ)弧の沈み込み開始と初期進化の概念モデル。多様な火成活動を地球ダイナミクスの視点を強調して示した。”40 Ma - present”(4000万年前~現在)の図中の白線は、それ以前”40 - 45 Ma”(4500~4000万年前)のプレート境界と上盤プレート下面の位置を示す。

TF: トランスフォーム断層、PAC: 太平洋、FAB: 前弧玄武岩

フィリピン海プレートに関する従来の研究成果を総括し、その結果に基づいてこれまで提唱されてきたフィリピン海プレート形成モデルを検証した。その結果、フィリピン海プレートの地史は、以下のようにまとめられる。 (1) 60~65 Ma(6500~6000万年前)頃にイザナギスラブが東アジア縁辺下で剥落したことにより、沖大東プルームの形成、古フィリピン海プレート(中生代に存在)の分裂、古フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界をなしていたトランスフォーム断層での収束運動の開始、伊豆・マリアナ・小笠原弧の沈み込みの開始という一連の過程を経て、最終的にフィリピン海プレートの誕生に至った。(2) 古フィリピン海プレートの初期分裂は54~48 Maにプルーム活動の影響下で起こり、長寿命の西フィリピン海盆やその他の短命の海盆群が形成された。これらを構成していた地殻の一部は“前弧玄武岩”と称されている。(3) 古トランスフォーム断層境界で地殻の短縮がはじまり、やがて52~50 Maには太平洋プレート内部に逆断層が生じて、太平洋プレートは新しく生まれたフィリピン海プレートの下へ沈み込みを開始した。当時のフィリピン海プレートは、厚い中生代の地殻と薄い海洋リソスフェアとで構成されていた。(4) 49~48 Ma頃に発生した最初のマグマはボニナイトマグマであった。上盤プレート上の海底拡大軸近傍に存在していた若い海洋性地殻の下で、沈み込みはじめた太平洋の地殻の脱水が起こりマントルコーナーの浅い部分から上昇したマグマである。(5) 太平洋の地殻が地下深部まで達し、上盤側の海盆部も冷えてリソスフェアが厚くなった44~45 Ma頃、噴出する溶岩の組成は高マグネシア安山岩へ、さらに島弧ソレアイト、カルクアルカリ系列安山岩へと変わっていった。(6) 新第三紀の間に伊豆・小笠原・マリアナ弧の前面150~200 km分は造構性浸食によって削られ、当初フィリピン海プレートに付加していた太平洋オフィオライトの大半もしくはすべては失われた。その結果、現在の海溝陸側斜面では、前弧玄武岩、ボニナイト、初期の火成岩類が露出している。(7) マリアナ前弧で見られる蛇紋岩泥火山は古フィリピン海プレートと太平洋を分けていたトランスフォーム断層の上に形成された可能性がある。

日本語原稿執筆者:沖野郷子(東京大学 大気海洋研究所 海洋底科学部門)
(敬称略)