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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

201605201605

2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波堆積物の研究に基づく南海トラフと駿河トラフで発生が想定されている最大クラス(レベル2)の津波の検討

北村 晃寿

Examination of the largest-possible tsunamis (Level 2) generated along the Nankai and Suruga troughs during the past 4000 years based on studies of tsunami deposits from the 2011 Tohoku-oki tsunami

Kitamura A

Tsunami deposits, late Holocene, Suruga Trough, Nankai Trough, Shizuoka Prefecture, 2011 Tohoku-oki tsunami deposit, Level 2 tsunami

a 静岡県内の先史時代の津波堆積物の分布.
b 静岡県内の静岡県内のレベル1とレベル2の津波の高さ.

2011年3月11日,日本観測史上最大規模の東北地方太平洋沖地震が発生し,それにより,10〜40mの波高の巨大津波が東北地方沿岸を襲い,甚大な被害をもたらした.この巨大津波の発生以前に,宮城県や福島県の沿岸地域では,津波堆積物の存在と古文書記録から,西暦869年にも大津波が発生したことが判明しており,さらに,大津波が再来する可能性の高いことも指摘されていた.だが,防災には生かされなかった.このことを教訓に,国は南海トラフと駿河トラフで起こる巨大地震に伴う「あらゆる可能性を考慮した最大クラス(レベル2)の津波の高さ」に関して11のケースを公表し,従来,防災対策の対象としてきた「東海地震,東南海地震,南海地震とそれらが連動するマグニチュード8程度のクラスの地震」による津波をレベル1とした.このマグニチュード8 程度のクラスの地震は,古文書記録から,西暦684年の白鳳地震以降,100〜150年間隔で発生したことが明らかになっており,南海トラフと駿河トラフの沿岸に波高10m余りの大津波をもたらした.静岡県では,レベル2の津波の想定波高は,場所によってはレベル1より20mも高く,沿岸地域で人口流出,地価下落,観光客の減少といった事態を引き起こしている.こうした状況を鑑みて,著者は,静岡県沿岸地域で過去数千年間にレベル2の津波が発生したか否かを検討した.まず「レベル2の津波による津波堆積物」と「レベル1の津波による津波堆積物」を区別するため,レベル2に匹敵する「東北地方太平洋沖地震に伴う津波堆積物」の特徴を先行研究から調べ,最も重要な相違点は分布の広域性であることを確認した.次に,著者ならびに他の研究者の先行研究を総括し,静岡県沿岸地域の過去4000年間の津波堆積物の分布を調べた.その結果,分布範囲の最も広い津波堆積物は,約3400〜3300年前に堆積し,浜名湖東岸の六間川低地,静岡平野,清水平野で検出された津波堆積物(原因となる津波を六間川―大谷津波という)であることが分かった.しかし,この津波堆積物は下田市・南伊豆町沿岸地域では検出されなかった.両地域におけるレベル2の津波の想定波高は,六間川低地,静岡平野,清水平野よりも10m余り高いとされている.したがって,下田市・南伊豆町沿岸地域で六間川―大谷津波の痕跡が見られないことは,この津波はレベル2の津波には該当しないことを意味している.つまり,静岡県では,過去4000年間に,レベル2の津波の発生を示す地質学的証拠はないと結論される.

日本語原稿執筆者:北村 晃寿(静岡大学 理学部地球科学科・防災総合センター)
(敬称略)