※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Biogeosciences

201512201512

冥王代の水素に富む海底熱水環境: 300 °C,500 barにおけるコマチアイトの蛇紋岩化実験

渋谷 岳造,吉崎 もと子,佐藤 雅彦,清水 健二,中村 謙太郎,大森 聡一,鈴木 勝彦,高井 研,綱川 秀夫,丸山 茂徳

Hydrogen-rich hydrothermal environments in the Hadean ocean inferred from serpentinization of komatiites at 300 °C and 500 bar

Shibuya T, Yoshizaki M, Sato M, Shimizu K, Nakamura K, Omori S, Suzuki K, Takai K, Tsunakawa H, Maruyama S

Serpentinization, Komatiite, Hydrogen, Hydrothermal fluid, Hydrothermal experiment, Hadean, Origin of life, Early evolution of life

高温高圧岩石・海水反応実験と天然の海底熱水噴出孔から得られた熱水中水素濃度の比較図

超塩基性岩の蛇紋岩化作用によって非常に水素濃度の高い熱水が発生することが知られている.この熱水中の水素は,原始生命がエネルギー代謝を獲得する上で最も重要な溶存ガス成分であると考えられている.しかし,初期地球の超塩基性火山岩であるコマチアイトがどの程度の水素濃度の熱水を発生させるのかどうかが明らかになっていなかった.そこで,本研究では冥王代のコマチアイトの蛇紋岩化作用で発生した熱水の水素濃度を推定するために,合成したアルミニウム枯渇型コマチアイトとアルミニウム非枯渇型コマチアイトを用いて300℃,500気圧の高温高圧条件で岩石・海水反応実験を行った.また,比較のためにカンラン石を用いた実験も同温度圧力条件で行った.その結果,熱水中水素濃度はアルミニウム枯渇型コマチアイトを用いた実験で約20 mmol/kg程度まで上昇し,アルミニウム非枯渇型コマチアイトを用いた実験では約0.05 mmol/kg程度まで上昇した(カンラン石を用いた実験では約60 mmol/kg).アルミニウム枯渇型コマチアイトを用いた実験での熱水中水素濃度は現在のカンラン岩をホストとする熱水中水素濃度(~16 mmol/kg)に匹敵し,アルミニウム非枯渇型コマチアイトを用いた実験での熱水中水素濃度は玄武岩をホストとする熱水のものと同程度であった.地球史を通じてマントルの温度が徐々に低下していることと,アルミニウム枯渇型コマチアイトはアルミニウム非枯渇型コマチアイトより高温のマントルプルームで発生することを考慮すると,冥王代の海洋底にはアルミニウム枯渇型コマチアイトが広く分布していたと考えられる.一方,初期地球の海洋地殻はマントルの温度が高かったため現在よりも非常に厚く,現在のように海洋底にマントルカンラン岩が露出していたとは考えにくい.したがって,マントルの温度がより高かった冥王代において,アルミニウム枯渇型コマチアイトの蛇紋岩化作用が海洋底における主要な水素発生プロセスであったと考えられる.つまり,アルミニウム枯渇型コマチアイトをホストとする海底熱水環境が生命の誕生と初期進化に重要な役割を担っていた可能性が高い.

日本語原稿執筆者:渋谷 岳造(海洋研究開発機構 海洋地球生命史研究分野)
(敬称略)