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日本語Abstract

Review

Interdisciplinary research

201512201512

沖縄トラフにおける表層水温プロキシ(アルケノン,有孔虫Mg/Ca,浮遊性有孔虫群集)とその古海洋学的意味合い

Kim R A, Lee K E, Bae S W

Sea surface temperature proxies (alkenones, foraminiferal Mg/Ca, and planktonic foraminiferal assemblage) and their implications in the Okinawa Trough

Kim R A, Lee K E, Bae S W

Sea surface temperature, Okinawa Trough, Alkenone, Planktonic foraminiferal Mg/Ca ratio, Planktonic foraminiferal assemblages

沖縄トラフにおいてプロキシデータが示す完新世後期(0~3 cal kyr BP)と最終氷期最盛期(18~21 cal kyr BP)の表層水温

沖縄トラフにおける3つの表層水温プロキシ(アルケノン,浮遊性有孔虫Mg/Ca,浮遊性有孔虫群集)について,各プロキシが記録する水温情報と古海洋学研究における意味についてレビューした.プロキシの適用性を確認するために,それぞれのプロキシに関連した生物について,水柱における季節分布および鉛直分布をまとめるとともに,表層堆積物を用いて復元した水温を現在の表層水温の観測記録と比較した.アルケノン不飽和指標を使って計算された水温は年平均表層水温を示し,Globigerinoides ruberのMg/Caから計算された水温は夏から秋(6~11月)の表層水温を捉えていた.浮遊性有孔虫群集から計算された8月の表層水温は観測された表層水温とよく一致したが,2月について計算された結果は観測よりも3.6℃暖かかった.

表層水温プロキシを海洋堆積物に適用した結果について完新世後期(0~3 cal kyr BP)と最終氷期最盛期(18~21 cal kyr BP)の2つの時代を比較した.その結果,比較したプロキシの中では浮遊性有孔虫群集によって計算された8月の表層水温が最も温暖であった.アルケノン水温は浮遊性有孔虫Mg/Ca水温よりも低い値を示した.これは,前者が年平均表層水温,後者が夏から秋にかけての表層水温を記録していることに起因すると考えられる.浮遊性有孔虫群集による2月表層水温は計算処理に用いた統計的手法やデータセットに強く影響を受けていると推察される.このように,沖縄トラフにおいてアルケノンや浮遊性有孔虫Mg/Caを用いて表層水温を復元する際には,そのプロキシ記録の持つ“季節性”を考慮して議論する必要がある.また,浮遊性有孔虫群集は沖縄トラフにおいて過去の表層水温,特に冬季水温を復元する上で正確性に欠けると言わざるを得ない.アルケノンの生産者とG. ruberはどちらも表層混合層に生息しているため,生息深度は水温復元において大きな問題にならないと考えられる.

表層水温や塩分プロキシによって復元された沖縄トラフ表層水環境の氷期-間氷期変化についてもレビューした.第四紀後期の間,沖縄トラフの表層水環境は黒潮と東アジアモンスーンシステムの変化に影響を受けていた.沖縄トラフの記録と中国の石筍,熱帯太平洋,北大西洋の記録を比較することにより,これらの間にはテレコネクションが存在することが明らかとなった.

日本語原稿執筆者:佐川拓也(金沢大学 理工研究域 自然システム学類)
(敬称略)