※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する51学協会と協力して出版しています.

※Progress in Earth and Planetary Science は,独立行政法人日本学術振興会JSPSより科学研究費助成事業(科学研究費補助金)のサポートを受けています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加51学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2014

201511201511

封圧下での含水花崗岩の弾性波速度・電気伝導度の同時測定および地球物理学的観測の解釈への応用

渡辺 了、樋口 明良

Simultaneous measurements of elastic wave velocities and electrical conductivity in a brine-saturated granitic rock under confining pressures and their implication for interpretation of geophysical observations

Watanabe T, Higuchi A

Seismic velocity, Electrical conductivity, Fluid, Crack, Pore

封圧増加に伴う弾性波速度と電気伝導度の変化

地殻流体は地震活動や地殻変動などの地殻ダイナミクスにおいて重要な役割を果たしている。観測から得られる地震波速度や電気伝導度から流体の分布を推定するためには含水岩石の弾性波速度や電気伝導度についての十分な理解が必要である。本研究では、含水岩石の弾性波速度と電気伝導度を理解するために、封圧下での含水花崗岩の弾性波速度と電気伝導度を調べた。間隙流体圧を常圧(0.1MPa)に保ちながら封圧を増加させたとき弾性波速度と電気伝導度は対照的な変化を示した。すなわち、常圧から50MPaまでの封圧増加に対する弾性波速度の増加が10%程度であるのに対して、電気伝導度の低下は約1桁にも達した。弾性波速度、電気伝導度の変化はともに、封圧下でのクラックの閉鎖によって生じたと考えられる。封圧180MPaにおいて弾性波速度が岩石固有の値に近づいたのに対して、電気伝導度の値は岩石の値よりも桁で高く、高圧でも液体が連結を保っていることを示した。岩石試料のX線CT観察から、クラックのほとんどは開いた粒界であることが分かった。ひとつの開いた粒界は、開口の異なる多くのセグメントから構成されているはずである。セグメントが同程度の長さをもつとき、開口の小さなセグメントが低圧で閉じるのに対して、開口の大きなセグメントは高圧でも開いた状態を保つ。低圧での電気伝導度の低下は、小さな開口のセグメントが閉じることによってもたらされたと考えられる。一方、大きな開口のセグメントは連結した経路をつくり、高圧でも液体を通した電気伝導を維持していると考えられる。開口の分布がべき乗則で表されるような場合を考えれば、低圧で観察された急激な電気伝導度の低下を説明できる。また、本研究で得られたクラック密度パラメータと規格化電気伝導度(バルクの電気伝導度と液体の電気伝導度の比)の関係を用いると、観測された地震波速度、電気伝導度から岩相、液体の電気伝導度の推定が可能となる。

日本語原稿執筆者:渡辺 了(富山大学 大学院理工学研究部(理学))
(敬称略)