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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201511201511

Hi-netで観測されたPKiKP波反射係数の周波数特性からみる複雑な内核境界

田中 聡, Tkalčić H

Complex inner core boundary from frequency characteristics of the reflection coefficients of PKiKP waves observed by Hi-net

Tanaka S, Tkalčić H

Inner core boundary, Topography, PKiKP, Finite difference modeling

地球の鉛直断面に投影したPKiKPとPcP波の波線。

PKiKPのICBでの反射点(緑の点)とCMBでの通過点(黄色い点)の分布。白い丸数字はICBでの反射係数周波数依存性がみられない地域、赤い丸数字は反射係数がある周波数でピークをもつ地域、薄青い丸数字は反射係数がある周波数でホールを持つ地域、赤と薄青の丸数字は反射係数にピークとホールの両方が見られる地域。黒い二重丸はICBでのFresnel Zone、赤い二重丸はCMBでのFresnel Zoneを示す。それぞれ、内側の丸は2Hz、外側の丸は1Hzの場合を示す。

高感度地震観測網(Hi-net)によって観測されたPKiKPとPcP波のスペクトル比を用いて、内核境界(ICB)におけるP波反射係数の周波数依存性を調べた。ここで観測されたPKiKP波は西太平洋直下のICBで反射してきたものである。ノイズレベルが十分小さい周波数範囲でみる限り、反射係数のスペクトルの特徴は4つに分類できる。それらは、平坦なスペクトル、1または3Hzのスペクトルホール、2または3Hzの強いスペクトルピーク、さらにピークとホールを両方含む場合である。観測されるスペクトルの多様性はICBの特性に多様な地域性が存在することを意味する。このICB反射係数の周波数特性を説明するために、我々は差分法を用いてICB近傍における2次元地震波動場シミュレーションを実施した。このシミュレーションで検討したのは、ICB直上に固体や液体の遷移層がある場合、ICB表面が正弦波的に波打っていたり、さらに規則的に先の尖ったピークが現れるような形状を仮定し、それらの空間波長や高さを変えた場合である。その結果、ICBの直上に余分な遷移層を与えた場合は、観測された特徴を説明できないので、除外することができることが分かった。一方、ICBに地形を与えた場合、空間波長や高さを数キロメートルと仮定すると観測を説明できない。しかし、ICB地形の波長や高さが1.0–1.5kmの範囲であれば、周波数依存が現れるという観測的特徴を説明できることが分かった。ICB地形の地域性は内核固化過程の地域性を現しているのかもしれない。

日本語原稿執筆者:田中 聡(海洋研究開発機構
地球深部ダイナミクス研究分野)
(敬称略)