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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2014

201509201509

ガーネット斑状変晶の拡散律速成長と非平衡度: 拡散律速成長で生じた斑状変晶は一般的か?

宮崎 一博

Diffusion-controlled growth and degree of disequilibrium of garnet porphyroblasts: is diffusion-controlled growth of porphyroblasts common?

Miyazaki K

Diffusion-controlled growth, Garnet, Metamorphism, Disequilibrium, Porphyroblast

(左)中央の不規則な形態のガーネット(緑),及びその周囲(白破線の内側)の反応物である黒雲母(赤)が枯渇する拡散ハロー(Figure 8より).

(右)拡散律速成長時の成長界面の不安定化,過飽和度,粒径,想定される斑状変晶形成経路(path-A)と斑状変晶を形成しない経路(path-B) (Figure 13より).

変成反応の律速過程と過飽和度は,地殻の脱水及び吸水反応速度を推定する上で重要である.流体の放出と吸収は,造山運動の進行,地殻内部での物質・エネルギーの輸送,及び地殻岩石の変形のしやすさに関係する.ガーネット生成反応は地殻内で起こる典型的脱水反応である.変成反応で生じたガーネットは,細粒基質中に径数ミリから数センチにおよぶ自形~半自形の美しい結晶として産することが多い.変成反応により生じた粗粒な結晶を斑状変晶と呼ぶ.ガーネット斑状変晶は,成長に必要な元素の拡散が律速する拡散律速成長で起こると仮定されることが多い.今回,日本中部に分布する筑波変成岩中のガーネット斑状変晶を用いて,拡散律速成長時の非平衡度を見積もった.このガーネット斑状変晶は,拡散律速成長時に期待される拡散ハローを伴っている.拡散ハロー内では,反応物が顕著に少なく,ガーネット斑状変晶が拡散律速で成長したことを示している.拡散律速成長における成長界面不安定性の数学的解析より,ガーネット斑状変晶界面の卓越波長は過飽和度(Δζ)に依存することが示せる.過飽和度(Δζ)は非平衡度の指標の1つである.測定された卓越波長の上限値と下限値を用いると,Δζは0.05 × 10-1~0.16と見積もられた.この値は,ガーネット1モルあたり0.9~27 kJのギブス自由エネルギー(ΔGr)のオーバーステップ,1.7℃~50℃の平衡温度からのオーバーステップに相当する.これらの非平衡度は,これまで他の手法で求められたガーネット生成反応の非平衡度と整合的である.本研究の結果は,ガーネット斑状変晶の形成に拡散律速成長が一般的であるとの考えに疑問を投げかける.ガーネットは,核形成のための有意な非平衡状態達成後に成長する.しかし,有意な非平衡度での拡散律速成長は,拡散不安定性を伴うことを特徴とし,今回の試料に見られるように不規則で枝分かれした形態をなす.すなわち,このような形態を示さない他の多くの変成帯に見られるガーネット斑状変晶は,成長に必要な元素の拡散と供給が充分な環境で,界面での反応進行が律速する界面律速成長で成長したことを示唆する.そのような環境は充分な量の流体の存在を意味する.今回の結果は,多くの変成帯でよく見られる自形~半自形のガーネット斑状変晶の存在が,地殻深部において充分な量の流体が存在した場の特定につながることを示唆している.

日本語原稿執筆者:宮崎 一博(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門 地殻岩石研究グループ)
(敬称略)