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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Atmospheric and hydrospheric sciences

201508201508

貿易風帯の浅い積雲に与える雲微物理過程の影響~Large Eddy Simulationの計算結果に最も影響を与える雲物理過程の特定

佐藤 陽祐,西澤 誠也,八代 尚,宮本 佳明,梶川 義幸,富田 浩文

Impacts of cloud microphysics on trade wind cumulus: Which cloud microphysics processed contributes to the diversity in a large eddy simulation?

Sato Y, Nishizawa S, Yashiro H, Miyamoto Y, Kajikawa Y, Tomita H

Large eddy simulation, Shallow clouds

感度実験により再現された貿易風帯の浅い積雲の雲水混合比の鉛直分布.赤線はビンスキームの結果,緑線は2モーメントバルクスキームの結果,水色線は1モーメントバルクスキームの結果を表す.また,併せて,過去のモデル間比較プロジェクトの中央値(黒線),25パーセンタイルから75パーセンタイルの幅(濃い灰色),最大と最小の幅(薄い灰色のシェード)を表す.

雲,とりわけ氷を伴わない暖かい雲は,地球のエネルギー収支に大きな影響を及ぼす.気候予測における暖かい雲に関する不確定性を低減するため,Large Eddy Simulation(LES)モデルによる数多くの数値実験が行われてきたが,世界の複数のLESモデルを用いて再現される暖かい雲の特性には,モデル間で大きなばらつきがある.貿易風帯の積雲を対象とした過去のモデル間比較プロジェクトによれば,雲の特性のばらつきを生み出す主な要因の一つは,各モデルの雲微物理スキームの違いであると指摘されている.しかし先行研究で用いられた複数のモデルは,方程式系,物理モデル,数値解法など多くの異なる要素があり,雲微物理スキームの影響のみを議論することは困難であった.

本研究では,近似を可能な限り排除し,数値解法などを全く同じにして,雲微物理スキームのみを取り替えた感度実験を行うことができる数値モデルを開発した.また開発した数値モデルを用いて,感度実験を行い,雲微物理スキームの違いが貿易風帯の浅い積雲に与える影響を評価した.その際,前述のモデル間比較プロジェクトで用いられた1モーメントバルクスキーム,2モーメントバルクスキーム,ビンスキームの3種類の雲微物理スキームを用いた.

感度実験から"雲粒が新たに形成される過程","雲粒から雨粒への変換過程"に関するスキーム間の違いが計算結果に最も大きな影響を与えることが示された.雲粒が多く形成される,または雲粒から雨粒への変換が早い場合(1モーメントバルクスキーム:図の水色線)は,降水が多く形成され雲の下の層(図の500mより下層)に落下する.落下した降水粒子は雲の下で蒸発し,雲の下の層を冷やすことで安定化を促し,雲の発達を抑えていた.一方,雲粒から雨粒への変換が遅い場合(2モーメントバルクスキーム:図の緑線)は,雲粒が蒸発しやすく,蒸発の際に放出される潜熱によって雲がより高い高度まで発達することが示された.

日本語原稿執筆者:佐藤 陽祐(理化学研究所 計算科学研究機構 複合系気候科学研究チーム)
(敬称略)