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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201506201506

SmKS地震波データから推測した外核最上部の成層構造

金嶋 聰,松澤 孝紀

Stratification of Earth's outermost core inferred from SmKS array data

Kaneshima S, Matsuzawa T

Outermost core, Compositional stratification, SmKS waves, Array processing

核の最上部を伝わるSmKS波(S2KS, S3KS, S4KS)の波線. 赤はS波で青はP波.

地球の外核の最上部には,外核全体と比べて異常な地震波速度構造を持つ領域が存在するのではないかと推測されている.本研究ではこの領域の存在に関して,現時点で可能な限り広い領域を覆うデータセットを用いて,速度構造の異常の存在を検証した.その結果,外核最上部の厚さ約300kmの範囲では,その下の外核中央に比べて,地震波速度の深さに伴う増加が有意に急激であることが確認された.この観測は外核を構成する液体の鉄・軽元素合金の実効的な体積弾性率が有意に大きいことを反映している.この異常の程度は外核の温度構造では説明できず,化学組成が深さ方向に変化していることを意味する.

外核の最上部を,マントルをS波として伝播し,核・マントル境界(CMB)においてP波に変換するSmKS波と呼ばれるCMBでの多重反射波が通過する.この波はしばしば,ロンドンのセントポール寺院などに知られる「ささやきの回廊」と類似した地球深部現象として説明される.この波の伝播時間(走時)を用いて外核最上部の構造を詳細に調べる事が原理的に可能であるが,走時に対するマントルや地殻の不均質の影響は無視できず,それらを取り除く必要がある.筆者らは,口径数100kmに及ぶ大規模な広帯域地震観測点ネットワークのデータを使用し,地震波形をスタックすることで,マントルや地殻の影響を大幅に抑制できると主張してきた.本研究では,太平洋とその周辺を覆うデータセットを用いて,スタックしたSmKS波の走時には深部マントル不均質は二次的な効果しかもたらさず,主として外核の速度構造が反映されていることを確かめた.

今回確認された外核最上部の地震波速度モデルは,核の構造とその変遷に関する大きな謎を提示している.現時点で妥当と考えられる鉄・軽元素溶液の密度と地震波速度の計算結果では観測された外核の速度構造モデルを満足するのは困難である.また異常領域の厚さ(〜300km)も,この構造が軽元素の拡散のみで出来上がったと考えるには大き過ぎる.この様な速度異常の成因に関して,今後さらなる研究が必要である.

日本語原稿執筆者:金嶋 聰(九州大学 理学部)
(敬称略)