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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Space and planetary sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2013

201505201505

地上と宇宙からの同時観測による動くカスプオーロラの粒子降下の調査

田口 聡,細川 敬祐,小川 泰信

Investigating the particle precipitation of a moving cusp aurora using simultaneous observations from the ground and space

Taguchi S, Hosokawa K, Ogawa Y

High-latitude ionosphere, Aurora, Particle precipitation, Cusp

動くカスプオーロラ構造(2つの矢印)のスナップショット

筆者らは,スバールバル諸島ロングイヤービイエンにおいて高感度の全天イメージャーを用いた観測を行っている.この装置による地上からの観測と人工衛星による上空での観測を通して,動くカスプオーロラが生まれて間もない段階と消滅前の段階における粒子降下の特性を調べた.

約3分の間隔で真昼付近に発生した2つのカスプオーロラ構造に着目した.惑星間空間磁場が安定して南西方向を向いている期間に発生したこれらのオーロラ構造は,発生場所のわずかな違いと動く方向の違いのために,発生後のある段階で隣接して位置することとなった.その時,DMSP F18衛星がこれらのオーロラの上空領域を通過した.衛星が取得した降下粒子のデータと地上の全天イメージャーの630 nmの波長のオーロラデータを詳細に比較すると,生まれて間もない段階のカスプオーロラの中では,イオンの降下は非常に高いエネルギーフラックスを示し,消滅前の段階のカスプオーロラでは,イオンのエネルギーフラックスは低く落ち込んでいることがわかった.一方,オーロラの発光に直接関係している降下電子については,2つのオーロラ構造で極めて似た特徴をもっていた.具体的には,約100 eVで降下してくる電子のエネルギーフラックスは両者で同じように非常に高い値であった.

このことから,動くカスプオーロラを光らせている降下電子は,カスプオーロラの発生から消滅までの一定の時間幅にわたって高いフラックスレベルを維持していることがわかる.また,この電子の降下フラックスは,マグネトシースから同時に注入されるイオンの降下が関与しないメカニズムによって制御されていると考えられる.

日本語原稿執筆者:田口 聡(京都大学 理学研究科 地球惑星科学専攻)
(敬称略)