※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

※Progress in Earth and Planetary Science は,独立行政法人日本学術振興会(JSPS)より科学研究費助成事業(科学研究費補助金)のサポートを受けています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加50学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

201505201505

海底地殻変動観測から見える南海トラフ沿いのプレート間固着の不均質性

横田 裕輔,石川 直史,佐藤 まりこ,渡邉 俊一,齋藤 宏彰,氏原 直人,松本 良浩,冨山 新一,藤田 雅之,矢吹 哲一朗,望月 将志,浅田 昭

Heterogeneous interplate coupling along the Nankai Trough, Japan, detected by GPS-acoustic seafloor geodetic observation

Yokota Y, Ishikawa T, Sato M, Watanabe S, Saito H, Ujihara N, Matsumoto Y, Toyama S, Fujita M, Yabuki T, Mochizuki M, Asada A

Seafloor geodetic observation, Nankai Trough, Interplate coupling, Seamount subduction

6点の海底基準点で観測された移動速度(2006年~2011年2月,赤矢印).比較のため,名古屋大の海底地殻変動観測結果(Tadokoro et al. 2012,青矢印),陸上GPS(GEONET)観測結果(国土地理院,黒矢印),フィリピン海プレートの沈み込み速度(DeMets et al. 1994,黄矢印),中央防災会議の想定する南海トラフ巨大地震(紫色の領域)と東海地震の震源域(橙色の領域),1944年東南海地震と1946年南海地震の震源域(Baba and Cummins 2005,青色と緑色の領域)を記載した.

フィリピン海プレートが日本列島下に沈み込む南海トラフ沿いのプレート境界では,1944年東南海地震・1946年南海地震など,繰り返しM8クラスの巨大地震が発生してきた.このプレート境界の固着域は海底下にあり,陸上のGPS観測網が離れているためプレート間の固着を把握できず,将来起こる地震の震源域や津波発生源を十分に推定できない.そのため,直上の海底における地殻変動観測が重要な役割を担っている.

海上保安庁海洋情報部では電波の届かない深海底における精密測位を実現させるため,GPS-音響測距結合方式(GPS-A)による海底地殻変動観測の技術開発を行い,観測を継続的に行ってきた.南海トラフ沿いでは,2006年から2011年2月までの期間に,東側から順に,東海地震の想定震源域近傍(東海沖)の2点(図中TOK1・TOK2),1944年東南海地震の震源域近傍(熊野灘)の2点(図中KUM1・KUM3),1946年南海地震の震源域近傍(紀伊水道沖)の2点(図中SIOW・MRT2)の計6点での観測を実施した.

東海沖の2点は陸側プレートの下に沈み込む古銭洲海嶺の直上に位置している.これらの点では,フィリピン海プレートの沈み込み速度と同じ程度の移動速度が観測され,トラフ軸近傍の固着率が高いことが示唆された.一方,紀伊水道沖の2点の内,室戸岬沖の観測点(MRT2)も沈み込む海山の直上に位置している.この点では,陸上に比べても半分程度の非常に小さい移動速度が観測された.この結果から,室戸岬沖での固着率は陸域直下のプレート境界よりも低いことが示唆される.

過去の研究では,沈み込む海山がプレート間固着を強くする可能性と弱くする可能性がそれぞれ指摘されている.東海沖では固着率が高く,室戸岬沖では固着率が低いという観測結果は,沈み込む海山は単純に強化・弱化のどちらか一方の影響を与えるのではなく,条件によってどちらの影響を与える場合もありうるということを示唆している.

日本語原稿執筆者:横田 裕輔(海上保安庁 海洋情報部)
(敬称略)