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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Interdisciplinary research

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2013

201504201504

アラゴナイト表面へのMg2+の取り込み:電子状態計算による考察

川野 潤,佐久間 博,永井 隆哉

Incorporation of Mg2+ in surface Ca2+ sites of aragonite: an ab initio study

Kawano J, Sakuma H, Nagai T

Aragonite, Impurity, Surface structure, First-principles calculation

アラゴナイト{001}面の構造(左図)と,Mg2+により置換された場合の構造(右図)

炭酸カルシウム(CaCO3)の多形(カルサイト,アラゴナイト,ファーテライト)の形成過程は,古くから様々な分野の研究者の注目を集めてきたが,いまだ十分な理解が得られていない.近年になり,形成される多形の決定にその表面エネルギーが大きな影響を及ぼしていることが指摘され,原子レベルでの表面の構造や,原子・分子の吸着の素過程を明らかにすることが,さらに重要な意味をもつようになってきた.そこで本研究においては,特に母液中に存在するとアラゴナイトの形成を促進させると考えられているMg2+のCaCO3表面での振る舞いに着目し,アラゴナイト表面近傍のCa2+サイトにMg2+が置換するのに必要なエネルギーを第一原理計算を用いて求めるとともに,置換によって引き起こされる表面構造の変化を考察した.

アラゴナイト構造は,基本的にCa2+よりも原子半径が大きい陽イオンを固溶するため,Mg2+は結晶構造内部には取り込まれにくい.しかし,表面近傍は原子の移動の自由度が大きいため,Ca2+サイトを置換することが可能となると期待される.実際に,アラゴナイトの{001}および{110}面近傍のCa2+をMg2+に置換するエネルギーを計算した結果,最表面にはバルクに比べて大幅に小さいエネルギーでMg2+が置換しうることが確認された.ただし,2層目以深のCa2+サイトにMg2+が置換する場合,特に{001}面においては置換エネルギーが急激に大きくなり,バルクにおける値に近づく.表面構造を詳細に検討すると,最表面においてMg2+が置換する場合,周囲のCO32-が,Mg2+が6配位をとるように回転することが明らかになった.一方{110}面では,最表面より深い位置にMg2+が置換する場合にもCO32-の回転が見られ,それに伴って置換エネルギーもバルクに比べてやや低くなる.これらの結果は,表面近傍のCO32-は非常に変動しやすいことを示しており,Mg2+などの不純物によってアラゴナイトの表面構造に大きな変化が引き起こされ,CaCO3の形成や成長に影響を及ぼしている可能性が示唆される.

日本語原稿執筆者:川野 潤(北海道大学 創成研究機構)
(敬称略)