※Progress in Earth and Planetary Science は,公益社団法人日本地球惑星科学連合(JpGU)が運営する英文電子ジャーナルで,JpGUに参加する50学協会と協力して出版しています.

>>日本地球惑星科学連合

>>参加50学協会へのリンク

  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
  • Progress in Earth and Planetary Science
Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Biogeosciences

201504201504

南極氷床下の水-鉱物相互作用と氷河湖の生物地球化学:氷床下の伏流水によるシリカ流入と基礎生産者のリンケージ

高野 淑識, 小島 久弥, 武田 恵理子, 横山 祐典, 福井 学

Biogeochemistry and limnology in Antarctic subglacial weathering: molecular evidence of the linkage between subglacial silica input and primary producers in a perennially ice-covered lake

Takano Y, Kojima H, Takeda E, Yokoyama Y, Fukui M

Antarctic ice sheet, Subglacial biogeochemistry, Subglacial limnology, Sedimentary record, Siliceous primary producer

東南極氷床のルンドボークスヘッダ地域の氷河湖と南極氷床のドレインマップ(Anderson et al., (Quaternary Sci. Rev., 2002)を一部改変).

南極氷床下には,基盤岩に接する氷の部分融解により液体の水(subglacial meltwater)が存在することがある.そのような氷床下の水は,地底湖を形成するほか,一部は伏流水となり,水脈に沿い,大陸縁辺部に向かって流れてゆく(例えば,Wingham et al., Nature, 2006).氷床下の水脈は,基盤岩との物理的削剥や化学的な水-鉱物相互作用(subglacial weathering)を経て,無機態の炭素(relic 14C)のほか,窒素,鉄,シリカ等の栄養塩をわずかに供給・運搬する.氷床下の伏流水の恩恵を受けるのが,氷床縁辺部の基礎生産者である.

南極全体の約1%程度は,完新世の氷床後退により,かつて氷床に覆われていた場所が露岩域となっている.そのような氷床縁辺部には,かつての氷食作用の形跡が見られる他,氷河性の湖沼が存在する.それでは,そのような湖沼では,水の収支や物理・化学的特徴が,そこに棲息している(棲息してきた)基礎生産者にどのような影響を与え,全体の微生物相は,どのように応答しているのだろうか.この問題に関しては,これまで,基礎的な記載が非常に少なかったため,我々は,東南極氷床のルンドボークスヘッダ地域の氷床縁辺部にある氷河湖を対象に,完新世の地史的背景と生物地球化学プロセスの記載を行った.永年的な氷に被覆された湖底には,少なくとも約6000年前から微細な氷河性砕屑物の堆積作用が始まっていた.初生的な基礎生産者は,同時期の海成湖沼(Lake Skallen:Takano et al., Appl. Geochem., 2012)でも観察された珪藻(Chaetoceros)であることが分かった.その後,氷床後退に伴うアイソスタティックリバウンドによる隆起と離水の後にも基礎生産者は,Chaetocerosに近縁な種が卓越しており,離水後に基礎生産者が,大気CO2(modern 14C)と大気N2に依存したシアノバクテリアに変遷するスカーレン地域とは,対照的な結果となった.ルンドボークスヘッダでは,無機態の炭素(relic 14C)を含む,氷床下の伏流水(窒素,シリカ等)に依存した独特の生態系を形成していることが明らかになった.

日本語原稿執筆者:高野 淑識(海洋研究開発機構 生物地球化学研究分野)
(敬称略)