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Progress in Earth and Planetary Science

日本語Abstract

Research

Solid earth sciences

Session convener-recommended article JpGU Meeting 2013

201406201406

水に浸された粉粒体における火炎構造形成のための振動条件

安田奈央,隅田育郎

Shaking conditions required for flame structure formation in a water-immersed granular medium

Yasuda N, Sumita I

Liquefaction, Earthquake, Flame structure, Permeability barrier, Laboratory experiment

A: 級化した2層の境界に形成される火炎構造の例(振動の加速度40.5m/s2、周波数40Hz)。

B: 振動停止後の振幅の大きさを振動パラメータ(加速度:1.4-78.3m/s2、周波数:10-5000Hz)で整理した結果。3つの破線(黒:臨界加速度 Γ、青:臨界エネルギー S、赤:臨界ジャーク J)で囲まれた桃色の領域で振幅が0.1mmより大きく(TransitionalとFlame)成長する。振幅が0.6mmより大きくなった場合をFlame(○印)と定義した。

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液状化が起きるためには地震がある程度以上大きいことが必要であることが経験的に分かっている。しかし必要とされる詳細な振動条件(加速度、周波数)は十分には分かっていない。堆積物中には火炎構造と呼ばれる波状構造が見られることがあり、液状化によって出来た可能性が指摘されている。私達はこの火炎構造に着目し、この構造が出来るための振動条件を制約するための小規模の振動実験を行った。

実験セルは水に浸された2層のガラスビーズ層からなる。ビーズ層の上層は細粒(粒径0.05mm)、下層は粗粒(粒径0.22mm)である。この粒径比により上層の浸透率は下層の1/19となり、浸透率のバリアーを形成する。セルを振動台の上に設置し、鉛直方向に5秒間正弦的に振動させたところ、加速度が十分大きいと2層境界で不安定が発生し火炎構造へと成長した(図A)。これは液状化に伴って上昇して来た間隙水が2層境界に一時的に貯留され、薄い低密度層を形成し、重力不安定が起きたためと考えられる。火炎構造は振動を停止した後もそのまま保持される。私達は振動が停止した後の2層境界における不安定の振幅を測定し、その大きさに応じて結果を整理した(図B)。その結果、火炎構造が出来るために必要な臨界加速度があること、さらにこの加速度が周波数に依存し、約100Hzで最小となることが分かった。この結果は液状化が起きやすい周波数帯があることを示している。この周波数依存性は振動のエネルギー、及び加速度の時間変化(ジャーク)の両方が臨界値以上になることが必要であるとして説明できる。本結果は火炎構造から古地震の振動条件を制約することが可能であることを示唆している。

日本語原稿執筆者:隅田育郎(金沢大学大学院 自然科学研究科)
(敬称略)